さすが、顧客満足の元祖とも言うべき、J.D.パワー。顧客満足を得て、それを計測し、分析して、会社の利益に反映するためのノウハウを凝縮してある。広範な分野をカバーしながら、豊富な事例と経験に基づく説明で説得力がある。
なにより、すべてを貫く信条が感じられるのが、信頼感につながっている。
文章も魅力的で、興味を持続したまま読み進められた。
J.D.パワー 顧客満足のすべて
クリス・ディノーヴィ、J.D.パワーIV世 (著)
単行本: 287ページ
出版社: ダイヤモンド社 (2006/8/25)
ISBN-10: 4478375208
ISBN-13: 978-4478375204
発売日: 2006/8/25
発刊に寄せて
顧客に期待を持たせているのは自分自身である。
ブランドはそれぞれ特定のタイプの消費者をひきつける。ブランドには買い手を選ぶ力がある。要するに、各ブランドは自分で自分の顧客の期待値を設定しているのだ。アルビン・トフラーが『パワーシフト
』に書いたように、情報の時代には権力が移行する。
第1章 顧客満足は利益の源泉
第2章 意思なきところに道はない
第3章 顧客ロイヤリティはなぜ重要か
「実際のロイヤルティ」のラインは、「意向のロイヤルティ」のラインよりもなだらかだ。つまり、あれほど文句を言っていたフレッドが、ある朝財布を手に再びあなたのお客として店の前に立っている可能性が少なからずあるということなのだ。
第一に、顧客満足は確かに顧客が最訪問・再購入する確立を高めるが、それは実際のロイヤルティを左右する数多くの要因の一つにすぎない。第二に、顧客満足がロイヤルティに与える影響の度合いは業種によってそれぞれ異なる。したがって、あるビジネスにおける顧客満足の重要度を知るためには、まず両者の相互関係を理解する必要がある。
(スイッチング・コストに含まれる要因)
競争相手の数、購買の頻度、他の選択肢に関する情報の入手しやすさ、購買コスト、「ロイヤルティ向上プログラム」の採用
スイッチング・コストでは、経済的コストよりも、別のブランドやよく知らないブランドへの乗り換えに伴う「手間」や「リスク」が大きなウェイトを占める。(ジャック・イン・ザ・ボックスがイマイチでも大丈夫、BMWのディーラー…目をつぶるだろう)
第4章 業績不振の本当の原因
第5章 推奨者、無関心者、そして刺客
評判は顧客の支持によって作られるということ、そして推奨者は一度に一人ずつしか作り出せないということだ。(ハーツの顧客が雨の日のシャトル体験でエイビスに乗り換えた例)
第6章 顧客接点は一様ではない
第7章 期待の先に満足はある
第8章 約束しすぎが失望を招く
最も破られやすい約束とは、「守る意思があるか、少なくとも守れるだろうという希望的観測の下になされた約束」だろう。それを我々は、「最善のシナリオ(BCS: Best Case Scenario)での約束」と呼んでいる。
(BCSによる約束が発生する原因)
顧客の期待することを言って対立を避けたいという欲求 / 複雑すぎるプロセス、非効率すぎるプロセスが歯車を狂いやすくし、結果として約束が守れなくなる。
第9章 トップの意思を伝える
満足しただけの顧客を推奨者に変えようとする際、重要なポイントがいくつかある。
・顧客満足を企業文化に不可欠なものにする
・企業はその言葉を口にするだけでなく、高らかに謳わなければならない
・顧客満足度向上は一時の施策ではなく、常に重視すべきことを従業員に周知徹底する
・財務上、戦略上の意思決定は、たとえ短期的な利益を犠牲にしても、長期にわたる顧客満足を判断の基準にする
・顧客満足に対する企業の意思は、トップダウンによって滝のように伝うものである人生すべてについて言えることだが、勝ち組はいつでも、短期的な採算性と長期的な顧客満足による便益をバランスさせる方法を見つけている。どんな状況においても、企業と顧客がWin-Winになる方法が必ずある。お金をケチって顧客を無言で立ち去らせるのは、必勝法でもなんでもない。かといって、繰り返し大盤振る舞いするのも、持続可能な策ではない。
第10章 業界の常識を破れ
(フェアモントホテルの10/5ルール)
お客が10フィート先にいたら相手の存在を認める仕草、つまりアイコンタクトを送るか、笑いかけるか、軽く会釈をするかのいずれかをするように求められている。その距離が五フィートに縮まったら、声をかけて挨拶しなければならない。
第11章 人材採用のコツ
企業で最も顧客に接する時間の長いのが、最も賃金の安い従業員だ。
(採用方針の根底にあるべき行動原理)
顧客と接する機会の多い従業員の採用では、専門能力より人柄を重視している。
・候補者の段階で最高の人材が集まるよう、相場より高い賃金を提示する用意がある。
・生え抜き社員を養殖に起用・昇進させることが企業の信条であることをアピールし、キャリア志向かつ顧客の長期的満足を考える人材をひきつけている
・枠にとらわれない従業員利益のあり方を模索し、魅力的な労働環境を作る。
第12章 従業員の判断に任せる
第13章 災い転じて福となす法
第14章 コミュニティの形成とファンの育成
(コミュニティを形成する時に重要なルール)
・人間本来の感情や帰属欲求をけっして過小評価しない。誰もが何かに属したいと思っている。
・顧客からの接触を待つのではなく、自ら顧客に近づいていくこと。賢い企業は積極的に顧客とのコミュニケーション経路を確立し、安定的に維持している。…沈黙するということは、危険な状態である可能性が高い。
・強固なブランド・コミュニティの構築は、競合他社に対する参入障壁の役割を果たす。
・コミュニティは、商品やサービスの質が当初の高い水準を持続的に満たさなくなると、その形成に要した時間に比べ実にあっけなく消滅してしまう。実質的な利益のない会員専用クレジットカードやポイント制のマイレージ・プログラムなどでは、本物のコミュニティがもたらすようなロイヤルティは獲得できない。本物のコミュニティには、易々と束ねることのできない無形の要素、つまり感情が介在しているからだ。
第15章 オンライン経験をコントロールする法
第16章 本末転倒に注意せよ
第17章 VOC経営こそ企業成長のカギ
的確な情報収集のための四つの質問
1) 競合他社の顧客に比べ、自社の顧客がどれだけ満足しているかを把握しているか
2) 会社の個々の支店や部署がどの程度顧客を満足させているかを測定しているか
3) j貴社の顧客のニーズを理解しているか(顧客を喜ばせるには何をすべきか。さらに言えば、顧客に自社と取引したいと思わせ、行動を起こさせるには何をすべきか)
4) 顧客満足が自社の企業利益にどの程度結びついているかを把握しているか (ロイヤルティや口コミへの影響度)
顧客の情報を実際に得ているのか、それとも、わざわざ聞くまでもなく顧客のことはわかっていると思い込んでいるだけなのか
…既存顧客より、そうでない人々からの売り上げを伸ばす手がかりのほうがはるかに多く得られることに気づくのではないだろうか。

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